実家が“資産”から“負担”に変わるとき
1970年代前半生まれを中心とする団塊ジュニア世代。親世代は高度経済成長を支え、多くの方がマイホームを築いた「一億総中流」の時代を生きてきました。しかしいま、その持ち家が、子ども世代にとっては“資産”ではなく“負担”になりつつあります。その背景にあるのが「空き家」の問題です。親が施設に入所されたり、あるいは亡くなられたりしたタイミングで、実家が空き家になることがあります。
地方では買い手が見つかりにくく、都市近郊でも築30~40年以上の住宅は価格が伸びにくい傾向があります。思い出の詰まった家であっても、必ずしも市場価値がつくとは限りません。 それでも、固定資産税は毎年かかりますし、庭の手入れや外壁の修繕、雨漏り対策、火災保険などの維持費も続きます。遠方の場合は、管理の委託費や交通費も必要になります。

“見えにくい固定費”が、住宅ローンを返済中の世代にとっては大きな負担となり、結果的に「二重ローンのような状態」になることがあります。そのために、空き家はそのままにしておけません。
2015年に施行された法律により、管理が不十分な空き家は「特定空き家等」に指定される可能性があります。その場合、固定資産税の優遇が外れ、税額が大きく増えることもあります。また、建物の老朽化による倒壊や景観の悪化、ご近所とのトラブルなどのリスクも考えられます。そのため、「売れないからとりあえず置いておく」という選択は、以前より難しくなっています。
なぜ団塊ジュニア世代に多いのか
団塊ジュニア世代は現在50代前後。まだ住宅ローンが残っている方も多く、子どもの教育費もかかる時期です。そこに、親の介護費や医療費が重なり、さらに実家が空き家になると維持費という“もうひとつの固定費”が加わります。
また、親世代の住宅は郊外の戸建てが多く、人口減少の影響で価格が下がりやすい傾向があります。売却しても思うような価格にならず、場合によっては解体費などの負担が発生することもあります。
空き家が負担になってしまう理由として主に次の3つがあります。①市場価値の低下(需要の減少や築年数の経過)②維持管理コストがかかり続けること③感情面から判断が先延ばしになりやすいこと。特に最後の点は大きく、「思い出があるから残したい」という気持ちから判断が遅れることで、結果的に建物の劣化や価値の低下が進んでしまうことがあります。

家計への影響
たとえば、毎月12万円の住宅ローンを支払う家庭が、空き家の維持費として年間30万円を負担すると、月あたり約2万5千円の追加負担となり、新たにローンを抱えるのに近い感覚になります。さらに将来、解体費用が発生する可能性もあり、経済的負担は一層大きくなります。
こうした状況を避けるためには、早めの対応が重要です。親が元気なうちに方針を話し合い、立地や需要を踏まえて現実的に判断し、相続についても事前に整理しておくことが求められます。また、場合によっては解体も選択肢に含めるべきです。早期に行動することで選択肢が広がり、より良い判断が可能になります。
さらに、空き家問題は個人の家計にとどまらず、日本社会全体の課題でもあります。人口減少や高齢化が進む中で住宅のあり方は変化しており、不動産は必ずしも値上がりする資産ではないという現実も認識する必要があります。
おわりに
住宅ローンという“目に見える負担”に、空き家の維持費という“見えにくい負担”が重なる時代になっています。実家の問題は、決して遠い将来の話ではありません。空き家は、そのままにすると負担になりやすい一方で、早めに向き合えば選択肢はしっかり残ります。家族の思い出を大切にしながら、家計とのバランスも考える。そのためには、気持ちと現実の両方を見つめながら、無理のない判断をしていくことが大切です。


