なぜ名義確認が重要なのか
親が高齢になり、将来的に実家をどうするかを考え始めたとき、多くの人がリフォームや売却の可能性を話題にします。しかし、意外と後回しにされがちなのが「名義」の確認です。実家の名義は誰になっているのか?それを正確に把握している人は、実はそれほど多くありません。
名義の確認は、相続や売却をスムーズに進めるための“最初の一歩”です。不動産は「登記」によって所有者が公的に記録されています。この登記情報と実態が一致していなければ、売却も活用も進めることができません。
たとえば、親が亡くなったあとも名義変更をしていない場合、法律上の所有者は故人のままです。その状態では、売却契約を結ぶことはできません。また、「親の名義だと思っていたら、実は祖父のままだった」というケースも珍しくありません。相続手続きが何代も未整理のままになっていると、権利関係が複雑化し、解決に時間と費用がかかります。

よくある名義トラブルの例
その1.相続登記がされていない
親が亡くなった後、遺産分割は話し合ったものの、正式な名義変更をしていないケースです。相続人全員の同意がなければ売却はできません。兄弟姉妹が複数いる場合、連絡が取れない人がいると手続きが止まることもあります。なお、2024年からは相続登記が義務化されました。これは 不動産登記法 の改正によるもので、正当な理由なく登記を怠ると過料の対象となる可能性があります。
その2.共有名義になっている
住宅ローンの関係などで、親と子の共有名義になっていることもあります。共有名義の場合、自分の持分だけを勝手に処分することは難しく、全員の合意が必要です。将来的に相続が発生すると、共有者がさらに増え、権利関係が複雑になることもあります。
その3.土地と建物の名義が違う
土地は父親名義、建物は母親名義というように、別々になっているケースもあります。どちらか一方でも手続きが滞れば、売却は進みません。特に古い住宅では、建物が未登記のままということもあります。
名義を確認する方法
名義は「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得すれば確認できます。法務局で申請するか、オンラインで取得することも可能です。確認すべきポイントは次の通りです。「所有者の氏名」「持分割合」「抵当権」などの設定の有無など。また、ローンが完済していても、抵当権抹消登記がされていない場合があります。この状態でも売却時に手続きが必要になります。
名義確認を怠ると、さまざまな問題が生じます。まず、買い手が見つかったとしても名義が整理されていなければ契約に進むことができず、結果として売却の機会を逃してしまう可能性があります。

また、相続登記をしないまま次の世代へ相続が発生すると、権利者が雪だるま式に増え、10人以上の相続人が関係するケースも珍しくありません。その場合、全員の合意を得ることは容易ではなく、手続きはさらに複雑化します。
さらに、誰も手続きを進められないまま不動産が空き家として放置され、固定資産税だけが発生し続ける“塩漬け”状態、いわゆる「負動産」になってしまうこともあります。名義確認は不動産を処分することではなく、将来の売却や活用を円滑に進めるための大切な準備なのです。
最初にやるべきは「確認」
名義を確認すると、「売らなければならないのでは」と感じる方もいます。しかし、確認すること自体は単なる現状把握です。将来の選択肢を広げるための準備であり、すぐに決断を迫られるものではありません。むしろ、名義が明確であれば、売却や賃貸活・リフォームなどといった選択肢を冷静に検討できます。
問題は感情や家族関係が絡むため複雑になることです。しかし、名義の確認は事実を整理するシンプルな作業です。登記を確認し、現状を把握する。それだけで、将来のトラブルを大きく減らすことができます。相続や売却を考える前に、まずは「所有者は誰なのか」を明確にすること。それが、実家問題をこじらせないための第一歩です。


