となりの空き家から木の枝が越境してきた場合は切ってよい?
空き家の身近な問題として、「お隣さんとの関係」があります。例えば、自分の土地の測量を行うときに隣地に入ってよいのか、伸びてきた木の枝を勝手に切ってよいのかといった問題です。
これらのお隣さんとの関係のことを、民法では「相隣関係」と呼んでいます。相隣関係は身近な問題であり、実は隣りから伸びてきた木の枝の切除に関しても、従来から民法に定められていました。

これまでは、隣地の竹木の 「根」 が越境してきたら自ら切除できましたが、「枝」は所有者に切除してもらう必要がありました。そのため、所有者が枝を切除しない場合、裁判所で判決を得て、強制執行の手続きをとらなければなりませんでした。
令和5年4月施工の民法改正により、枝も切除可能に
隣地から枝を越境された土地の所有者は、一定の要件を満たせば自ら枝を切り取ることができる権利を定めた改正民法が令和5年4月、施行されました。所有が分からない土地の問題を解決する対策のひとつで、隣から伸びる枝に困っている人には対処の選択肢が増えることになりました。
次のいずれかに該当すれば、切除できるようになりました
①所有者に催告したが、相当の期間内に切除してもらえない
②竹木の所有者がわからない、またはその所在が分からない
③さしせまった事情・急迫の事情がある
まずはトラブルを防ぐために、できるだけ口頭または書面で切除してもらうよう求めるほうが望ましいです。
隣の敷地を一時的に使わせてもらう場合は
これまでは、土地所有者が外壁の修繕をしたり、フェンスを築造する場合、「隣地の使用を請求することができる」と定めていましたが、その具体的意味がよく分からず問題になっていました。
例えば、「使わせて下さい」と請求しても、隣地の所有者が「嫌です」と断った場合にはどうすればよいのでしょうか。また、そもそも隣地の所有者が分からない場合にはどうすればよいのでしょうか。

従来は、土地所有者が隣地の所有者に「使用を請求できる」だけでしたが、土地所有者の権利が「使用請求権」から「使用権」に改められ、所定の目的の範囲内であれば、隣地を「使用できる」ようになりました。
また隣地使用ができる目的をより詳細に規定し、「境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕」、「境界標の調査又は境界に関する測量」、「越境した枝の切り取り」としています。
これまで不明確であった、フェンスの築造や建物を壊す場合や、境界調査、植栽の剪定(隣地にある植栽の枝が延びて自分の土地に越境している場合で、隣地の所有者に剪定を求めても対応してくれない場合や所有者が不明な場合等に限る)などの場合にも、隣地を使用できることが明確になりました。
ただし、使用にあたってはあらかじめ隣地の所有者や使用者に通知するとともに、隣地に最も損害が少ない日時・場所・方法を選ぶ必要があります。
相隣関係の見直しがされたことによって
民法の改正により、隣り合った土地の権利の調整について民法で規定されている「相隣関係規定」について見直しが行われ、令和5年4月1日から施行されました。
隣地使用権、ライフラインの設備の設置・使用権、越境した竹木の枝の切取りについて、あいまいであった部分が明確化されたほか、新たなルールが整備されたことで、これまで困難であった空き家や所有者不明土地にも対応できるようになり、土地の円滑な利用や適正な管理が可能になると考えられています。